
これから行政書士試験を受験される方は、その合格率も調べて把握している方も多いことでしょう。
言わずもがな、行政書士試験はかなり合格率が低い国家資格試験です。
下記に過去10年間の行政書士試験合格率を表でまとめてみました。
■行政書士試験の合格率 過去10年分
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
2015年 | 44,366 | 5,820 | 13.1% |
2016年 | 41,053 | 4,084 | 9.9% |
2017年 | 40,449 | 6,360 | 15.7% |
2018年 | 39,105 | 4,968 | 12.7% |
2019年 | 39,821 | 4,571 | 11.5% |
2020年 | 41,681 | 4,470 | 10.7% |
2021年 | 47,870 | 5,353 | 11.2% |
2022年 | 47,850 | 5,802 | 12.1% |
2023年 | 46,991 | 6,571 | 14.0% |
2024年 | 47,785 | 6,165 | 12.9% |
平均合格率 | 12.4% |
このように、毎年おおよそ10%前後で推移しています。
行政書士は確かに難関資格の1つとされていますが、ただ単に難しいだけではなく他にも合格率が低くなる要因が以下のとおり6つあると考えております。
- 合格率が10%程度になるように設計された試験である
- 年に1回しか受験機会がない
- とにかく試験範囲が広い
- 受験資格がなく誰でも受験が可能
- 自分に合っていない教材で学習している人が多い
- 社会人は学習時間の確保が難しい
この記事では、要因としてピックアップした6つの事項について解説していきたいと思います。
【合格率が低い理由①】合格率が10%程度になるように設計された試験である

まず1つ目の理由は合格率が10%程度になるように設計された試験であるという事です。
行政書士試験は全体の6割の点数を取れると合格となります。「6割正解で合格だったら自分も簡単に合格できそうだ」と思われるかもしれませんが、簡単だったらもっと合格率が高いはずですよね。
ではなぜ合格率が低くなっているのでしょうか。それには、以下の2つの要素が大きく絡んできます。
- 足切りラインがある
- 記述式の採点で合格率を調整している
それぞれ、もう少し詳しく解説していきますね。
足切りラインがある

まず、行政書士試験には足切りラインが設けられています。
足切りラインとは、合格基準点を超えていたとしても一定の基準をクリアしていなければ不合格となってしまう基準の事。
行政書士試験の足切りラインとして設けられているのは以下の2点です。
- 法令等科目の得点が満点の50%以上
- 一般知識等科目の得点が満点の40%以上
行政書士試験は300点満点となっており、60%以上の得点で合格ですから、トータルの合格基準点は180点以上となります。そこに更に上記の条件が加わるというわけです。
ここまでを一覧表で整理してみましょう。
科目 | 出題形式 | 問題数 | 配点 | 基準点 (足切りライン) |
法令等 | 択一式 多岐選択式 記述式 | 40問 3問 3問 | 160点 24点 60点 | 122点 ※合格には最低124点必要 |
一般知識等 | 択一式 | 14問 | 56点 | 24点 |
合計 | 60問 | 300点 | 180点 |
まとめると、法令科目に関しては244点満点中124点以上、一般知識科目に関しては56点満点中24点以上を上回らなければ、いくら合計で180点以上取っても不合格となってしまうというわけです。
これが、まず1つめの要素です。
記述式の採点で合格率を調整している

2つめの要素は「記述式の採点で合格率を調整している」というものです。
択一式、多岐選択式については明確な答えが存在しますが、記述式はそうではありません。
合格点が定められている以上、行政書士試験も絶対評価の試験であることに間違いないのですが、記述式は明確な答えが存在しないため、ここで合格率、合格者の調整をしています。
つまり、100%絶対評価の試験ではなく、相対評価の部分も兼ねた試験であると捉えていただいた方がいいでしょう。
開催年によって難易度や採点の甘辛度が若干変動するのは、その年の受験者の択一式、多岐選択式の出来によって変わるためです。
このように、足切りラインの存在と記述式の二重の調整弁で合格者数を調整して10%程度に留めているというわけです。
【合格率が低い理由②】年に1回しか受験機会がない

行政書士の試験は毎年11月に開催されています。
他の国家試験では、規定年度まで受験が免除される科目合格制度を導入されている資格も多くありますが、行政書士試験には導入されておらず、年に一度の一発勝負となるわけです。
科目合格制度があれば不合格だった科目だけ集中的に学習して、次回の試験でリベンジできるのですが、行政書士の場合は全科目受け直さなければなりません。
得意科目であれども、1年間学習しなかったら嘘みたいにキレイさっぱりと忘れてしまいますので、苦手科目だけでなく全体的にまんべんなく学習を強いられてしまうわけです。
また、法律系の資格になりますので、法改正が行われた場合は、常に新しい情報に知識を上書きする必要があります。法改正が行われた箇所はテストにも出やすいので必須ですね。
一度試験に落ちてしまった場合、次の1年後までモチベーションと学力をキープするだけでも結構大変ですし、苦手科目の克服もしていかなければいけない難しさがあるのも、合格率が低い理由となります。
行政書士は一発勝負という点で合格のハードルがグンッと高くなっているため、試験のハードルは国家試験の中でも上位の難易度と認識しておいた方がよいでしょう。
【合格率が低い理由③】とにかく試験範囲が広い

行政書士試験では、記述式を除き回答を選択肢から選ぶ選択式が採用されていますが、そもそも法令5科目+一般知識3科目と試験範囲がかなり広いため、いくら選択肢があったとしても、問題内容を理解できていないと答えを当てることが難しくなっております。
出題科目は以下の通りです。
- 基礎法学
- 憲法
- 民法
- 行政法(地方自治法含む)
- 商法・会社法
- 情報通信・個人情報保護法
- 文章理解
- 政治・経済・社会
司法試験で定番の憲法・民法・商法・行政法だけでなく、政治・経済・社会、さらにはIT用語が問われる情報通信やほぼ国語の文章理解まで詰まった試験範囲ですからね。
当たり前ですが、ちょっとやそっと勉強した程度では網羅することは不可能な範囲となっております。1日2~3時間、1年間毎日学習しても、全て頭に入れるのは相当困難でしょう。
ですので、出題されやすい問題を精査して必要最低限の学習をしたり、自分にとって覚えやすい学習方法で取り組んだり、いかに短期間で効率よく学習できるかがカギとなります。
【合格率が低い理由④】受験資格がなく誰でも受験が可能

行政書士試験には受験資格がありません。
ですので、受験手数料さえ支払えば年齢・国籍・学歴問わず誰でも受験が可能となっております。極端な話になりますが、小学生や100歳の高齢者やアフリカ人であっても受験できるわけです。
実際に、令和6年度の行政書士試験最年長合格者は90歳で、最年少合格者は13歳というデータもあるくらいですからね。とにかくいろんな人が受験をしているというわけです。
受験者の中には試験レベルを見誤り、勉強不足でチャレンジする人もいるでしょうし、「とりあえずどんなもんか試しに受けてみよう」といった世間的に良く耳にする記念受験者も多くいる事でしょう。
やはりこのような受験者のほとんどは不合格になってしまいますので、必然的に合格率が低下してしまう原因となっているでしょう。
【合格率が低い理由⑤】自分に合っていない教材で学習している人が多い

意外と気にしていない方も多いかもしれませんが、自分に合っていない教材で学習し、合格基準に達していないまま本番を迎え受からないケースもよくあります。
いくら試験までに学習時間を確保できても、頭に入らずテキスト内容を理解できていなかったら無駄になりますよね。それだけ学習する上で教材選びが重要になっています。
正直、教材費用は結構高く、一度購入してしまうと例えその教材が自分に合っていなかったとしても、なかなか違う教材を購入するといった人は少ないでしょう。
また、教材の種類は書店で販売されているものや、各学校の講座でパック化されているものなど、たくさんの種類がありますので選ぶのは大変です。
ですので、勉強時間や労力を無駄にしないためにもじっくりと時間をかけて自分に合った教材選びをしていく必要があります。
実際に学習してみないと分からない場合は、各学校のサンプルテキストを手に入れるなどをして、試してみるといいでしょう。
下記記事にて自分に合ったテキスト選びの方法ついて解説しておりますので、興味のある方はぜひ参考にしてください。

【合格率が低い理由⑥】社会人は学習時間の確保が難しい

行政書士試験の受験者の中には、学習時間の確保が難しく「十分に学習できないまま受けて落ちた」という方も多いでしょう。特に会社勤めの社会人にとって勉強時間の確保というのはひとつの大きな課題になります。
行政書士の学習時間目安は700~800時間といわれており、仮に800時間要す場合、毎日2時間ずつ学習したとしても13ヶ月かかってしまいますので、1年で合格を目指す場合は1日3時間確保したいところです。
- 800(時間) ÷ 2(時間) = 400(日) = 約1年1ヶ月
- 800(時間) ÷ 3(時間) = 267(日) = 約9ヶ月
しかし、日々の生活において学習時間を1時間確保するだけでも厳しいという方もいらっしゃる事でしょう。繫忙期で残業が続く場合もあるでしょうし、全く学習ができない日が出るのも考えられますからね。
そうならないためには、いかに休日やスキマ時間を有効活用し工夫できるかが重要となってきます。勤務日に学習できなかった時間は、休日にまとめて学習し不足した時間を確保すれば良いでしょう。
ただ、長時間の勉強は集中力が持続しないというデメリットがありますので、勤務日に少しでも学習し休日の負荷を減らすべきです。
例えば、通勤時間や昼休み、トイレで座っているちょっとした時間も学習時間として有効活用できます。いかに忙しい日常で効率よく学習できるかがカギになってきますので、しっかり学習計画を立てて取り組んでいきましょう。
行政書士の学習時間についての詳細は以下の記事でもまとめておりますので、宜しければご覧ください。

まとめ

ここまで、行政書士試験の合格率が低い理由を解説してきました。
上記で挙げた通り、行政書士試験の合格率が低い理由は色々とありますので、実際試験本番まできっちり学習をして臨んだ人だけに限定すれば、合格率はもう少し高くなると考えられます。
ですので、合格率の低さに尻込みする方もいらっしゃると思いますが、あまり気にしないようにしましょう。
また、試験で6割以上取れれば合格なので全て覚えて満点を取りに行く必要はありません。簡単な話、過去問や模試などで7割程度取れていれば十分合格ラインに達していると思いますので、まずはそのラインにたどり着けるように焦らずキッチリと学習していきましょう!
なお、行政書士試験に合格できる確率を少しでも上げたいという方は通信講座がおすすめです。理由としては以下の通りです。
- 実績のあるカリキュラムで勉強の計画ができる
- ポイントを押さえた講義やテキストなので効率が良い
- 自分の空いた時間で勉強を進めることができる
- 基本動画学習なので、くり返し観たり倍速再生ができる
- 費用が比較的安く済む
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